「人生の終わり」だと思ったあの日から
私はこれまで、約25年以上、男性として社会人生活を送ってきました。様々な職業を通して、常に「人と関わること」を大切にしてきました。しかし、自分自身の性別に対する違和感は幼少期からずっと抱え続けており、それを周囲に打ち明ける勇気を持てないまま、蓋をして生きてきたのです。
そんな中で突然、脳出血を発症しました。一命は取り留めたものの、目覚めたときは体が思うように動かず、服を着ることも、文字を書くこともできません。「高次脳機能障害」という診断名がついたとき、正直「私の人生は終わった」と絶望の淵にいました。リハビリを続ける中で、心の中に一つの強い思いが芽生えました。
「どうせもう一度やり直す人生なら、今度こそ自分を隠さずに生きたい。自認する性別(女性)として働きたい」
その目標を胸に退院し、インターネットで見つけたのがReBitのダイバーシティキャリアセンター(DCO)でした。
できない自分と向き合い、少しずつ「私」を取り戻す
利用を開始した当初、私にとって最大の壁は「パソコン操作」でした。これまでの経験から事務スキルには自信がなく、障がいの影響で新しいことを覚えるのにも時間がかかります。「本当に私に事務職なんてできるのだろうか」と、もともとネガティブになりやすい性格も相まって、何度も落ち込みました。
そんなとき、スタッフの皆さんはいつもチームのように寄り添ってくれました。私が不安で動けなくなっていると、一緒にランチをしながら話を聞いてくれたり、ネガティブな思考をポジティブな視点へリフレーミング(言い換え)してくれたり。一人では悪い方へばかり考えてしまう私にとって、その献身的なサポートが、週5日の通所を続ける最大の支えになりました。
特に印象に残っているのは、パソコン作業の実習への挑戦です。「絶対に無理だ」と思っていた私に、スタッフの方は私の特性に合った実習先を提案してくれました。そこで得た「自分にもできる」という小さな自信が、のちの就職活動での大きな力になりました。
「自分らしい姿」で挑んだ就職活動
就職活動を進める上で、セクシュアリティに関するサポートも大きな転機となりました。最初はズボンで通所していましたが、体験実習をきっかけに就職活動用のスカートを着用することにしました。雇用前実習の際にはスタッフの方と、自分らしく働くためのオフィスカジュアルを探しに衣料品店へウィンドーショッピングへ行きました。この時間は、本当に楽しく、勇気づけられる経験でした。
「スカートを履いて街を歩いてもいいんだ」「ありのままの自分で面接に臨んでもいいんだ」と思えるようになったのは、日々の通所の中でスタッフの方が一歩一歩、背中を押してくれたからです。
面接では、これまでの経歴とともに、障がいのこと、そしてセクシュアリティのこともカミングアウトしました。以前の自分なら怖くてできなかったことですが、DCOで準備を重ねてきたからこそ、胸を張って伝えることができました。
神様がくれた、新しい人生のタイミング
今回、あるホテルの人事部での採用が決まりました。実習へ行った際、職場の皆さんの雰囲気がとても温かく、障がいや性別のことも含めて「こちら側の目線」で配慮してくださる姿勢に、迷わず「ここで働きたい」と感じることができました。
一年前、病室で絶望していた自分に伝えたいです。「あの出来事は、新しい人生を始めるために神様がくれたタイミングだったんだよ」と。
50代後半となり、今、ようやく「女性としてキャリアを積んでいきたい」という希望を持つことができました。DCOに通わなければ、今もうじうじと悩み続けていたかもしれません。もし今、一人で悩んでいる方がいたら、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。ここには、どんな思いも受け止めて、一緒に伴走してくれる人たちがいます。
